砥の粉について

私は趣のある昔ながらの家の改装工事をよく手掛けます。先日も打ち合わせの為お客様の家を訪問しておりました。お客様がこの家気に入っているけど、『木が何となく白く汚れているのよね』と独り言の様に呟いていました。私は直ぐ原因が分かりましたので説明を致しました。

これは奇麗に仕上げた材木を職人さんが直接手で触ると職人さんの手の油が付いてしまい、何年かすると触った所が指や手の形として浮き出てきます。『それは手の油が酸化した物で拭いても取れません。ですから鉋で奇麗に仕上げたら直ぐ、土を水で溶いた物で汚しておくものなんですよ』と説明しました。そして水で濡らした雑巾で拭いてあげると、薄い飴色の杉や檜の『木』本来の色が出てきました。お客様はびっくりして『手抜き工事ですか』と聞きますが、最近は予算の関係でこの種のクリーニングを省略してしまう業者もいるようです。

木の持つ本来の輝きを発揮させずにいるのは勿体ない事です。天井も同じで、手形の付いている天井をよく見ますが、無垢の本物を使っているのに残念としか言いようが有りません。趣のある家にお住まいの方は、合板ベニヤ・ビニールクロス・ペンキ仕上げの家との違いを楽しんで豊かに暮らしてください。